2019.09.01
- セルフハック
- 脳と身体の仕組み
私たちが見ている【現実】は本物か?
この記事の内容
私たちが生きる現実は本物か?
先日、脳科学者の池谷先生の講演を見ていて、その中で興味深いお話しをされていたのでご紹介させて頂きます。
【私たちが見ている世界は本物か?】
そんなタイトルでした。
その内容はというと…..
「私たち人間には見えない物が見えてる生き物がいる。」
紫外線
超音波
地磁気
などなど
彼らにあって私たちに無い物は、感覚器官(かんかくきかん)
それらの情報を処理する脳は持っている。
そして私たちは新たな感覚器官を脳に後付けする研究を行っている。
そんな斬新なお話でした。
今回は、それが皆さんの健康、私たちの日常にどう結びつくのか、私の意見を紹介させて頂きたいと思います。
ラットが方位を認識する。
では、実際に池谷先生がどんな実験を行ったのかというと、眼が見えないラットの脳(一次視覚皮質)に電極をさして地磁気解析のマイクロチップをくっつけたんですね。
すると。
ラットは地磁気チップの情報を基に迷路をクリアしてエサをゲットできるようになった!というものです。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1504/06/news102.html
電極を刺した場所は、いわゆる視覚情報を処理する部分。
つまり、ラットは地磁気が「見える」ようになったのです。
同じ様な実験では、前庭器官(ぜんていきかん)バランスを感じる器官が障害された被験者に、バランスを感知する機械がついたヘルメットを被せて舌に電極を置くという物があります。
最終的には、舌の感覚でバランスをとれるようになったという物です。
また、同じようなデバイスをカメラにつなぎ、舌に電極を置く事で、視機能を失った人の視覚野が舌の感覚情報を認識し始めると言った研究もあり、実際に実用化がされています。
この様に私たちの脳は、そもそも自分の体にない感覚器官の情報すら処理できる能力を持っているのです。
脳の可塑性
実験では、ラットの脳に直接電極をさして、本来視覚情報を処理する部分で、地磁気を処理させました。
つまり、脳に本来とは違う課題を与えたのです。
そして、その課題(刺激)に対して脳は順応しました。
しかし、こういった事は特別な実験を行わなくても、私たちの体に起こっていることを知ることができます。
【例えば、眼が見えない人】
すごく音に対して感覚が鋭くなるのは、使われなくなった視覚野が音の情報の処理にまで関わり始める事であったり。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/016622369593948W
【バイク事故で腕を切断した青年】
あるはずのない腕の感触を、頬を触られた時に感じるように…..
MEG(magnetoencephalography)で脳を調べた結果、切断された腕の感覚野が、頬の感覚を処理する様になっていたとか。
このように、脳は与えられた刺激に対して、物凄く柔軟に変化するポテンシャルを秘めています。
自分の体?物?
また、もっと身近なところで言うと、物に感じる固有受容感覚(こゆうじゅようかんかく)と言う物があります。
固有受容感覚とは、自分の体が空間に置いてどこにあるのかを認識する感覚です。
しかし、脳は自分の体にない物にまで、その感覚を伸ばします。
野球選手がバッドを自分の体の一部のように扱えたり。
車を運転しながら車体を自分の一部として認識したり。
脳はこのように、自分の体に無い物の感覚を処理したり、あたかも自分の一部であるかのように扱う事が出来ます。
では、そもそも自分の体はどうでしょうか??
どれだけ正確に認識できているのでしょうか?
自分の一部を忘れる
神経細胞は刺激によって活性化し、順応していきます。
一方で、しばらくの間使われなかった神経細胞はTrance neuronal degeneration(TND)と言うプロセスを辿り、死滅していきます。
例えば、体の一カ所をしばらく動かさなかったとしたらどうでしょう?
動かさなかった箇所からは、脳への刺激が不足します。
その結果、対応する脳の神経細胞は、働きが悪くなります。
つまり、しばらく使われなかった体の部分は、脳によって忘れられて行くのです!!
よく使う『物』を自分の一部として認識する一方。
あまり使われない『自分の体』は自分の体で無くなって行きます。
あなたは、股関節(脚の付け根の関節)をすべての可動域で動かした事はありますか?
人生の中で眼をすべての方向に意識的に動かした経験はありますか?
足の骨が別々に動く感覚はありますか?
代償の中で生きていく
“脳が自分の体を忘れていく”
言葉にすると怖いですが、よほどの事故などで突然の変化が起こったので無い限り、その事に気づくことはあまりありません。
私たちの脳は目的達成思考で働いています。
自分の行動や動きには何かしらの目的が存在します。
そしてその目的が達成できている限り、多くのことは問題ないと認識されています。
アスリートや、よほど体のパフォーマンスを求める事をしていない限り、多少体の中で使えていない部分があったとしても気になりません。
たとえ肩が上がらなくても、背伸びをすれば良い。
たとえ歩くのが苦手でも車に乗れば良い
しかし、そこには何かしらの代償作用、エネルギー効率の悪さがあり、私たちの日常の質を低下させています。
私たちは自分の感覚の中で生きている
池谷さんは話の冒頭で、すごく分かり易い比喩表現を使っていました。
【気が利かないことには気づかない】
電車でお年寄りに席を譲る少女。その隣で新聞を広げてい読む中年男性。
新聞を読んでいる男性は側からみると気が利かないが、本人はそうは思わない。
ただ気付かないだけ…….
私たちは、超音波や紫外線、地磁気が見える世界には気付きません。羨ましいとも中々思えません。なぜなら、その世界がどれだけ素晴らしいか知らないから。
私たちは、感覚器官を通して自分が感じる世界、自分が『こうである!』と予測した世界を生きています。
つまり、自分が生きる現実と、他人が生きる現実が違う事に私たちはなかなか気付きません!
『自分の感覚では不可能と思えることを、いとも簡単に達成出来てしまう現実が存在する。』
私は、自分の感覚器官をトレーニングしていくプロセスでそれに気付きました。
目が良くなり、動作感覚が変わり、バランスが変わり、頭の回転スピードが変わる。
そして体の不調は減り、自分が自分であることを強く認識する。
今の自分は3年前の自分とは全く違う現実を生きている事を実感しています。
逆も然りで、今何もしなければ、私たちは歳をとるにつれ、気付かず体の機能をどんどん失って行きます。そんな未来が当たり前にやって来る事を避けられません。何もしなければ。
皆さんが生きる世界は、より素晴らしい物になるポテンシャルを秘めています。それは、皆さんの内側にあります。それは皆さんの脳です。
皆さんが人生を生きる乗り物としての体を、そのエンジンである脳をチューニングアップする方法を今後も伝えて行きたいと思います。
よかったらシェアしてね!