肩が重い、腕を上げると引っかかる、背中が張って呼吸まで浅くなる。肩甲骨まわりのこうした不調は、ストレッチやマッサージをしてもその場かぎりで、次の日にはまた元通り……という方がとても多いです。
こんにちは、宮崎ほくとです。神経科学に基づいたトレーニングの資格を持つトレーナーとして、体を根本から変える方法をお伝えしています。
結論からお伝えします。肩甲骨は、物理的には「はがれません」。はがすべきなのは、脳の中でくっついてしまった「肩甲骨と胴体」のイメージです。肩甲骨を動かす筋肉をひとつずつ脳にマッピングし直していくと、力ずくで剥がそうとしなくても、肩甲骨は驚くほど軽く動き出します。この記事では、その具体的な手順を実際のセッションのやりとりと一緒にお伝えします。
「肩甲骨はがし」で本当に肩甲骨は剥がれるのか
今回は肩甲骨はがしをやっていきたいと思います。はるなさん、肩甲骨はどうですか?
はるなさん(以下「は」)「どう?いきなり「どう?」って聞かれても(笑)」
今は硬さを感じたりします?
は「ちょっと背中が硬い」
肩甲骨が張っていると呼吸が浅くなったり、肩に力が入りやすかったりとか、そういうことがあると思うんですよ。そういう理由からなのか、一般的に肩甲骨はがしがめちゃめちゃ流行っていますよね。でも、肩甲骨って剥がれないの、知っています?
は「そりゃ剥がれないでしょ」
剥がれないんですよね。なのに肩甲骨はがしって流行っているんです。
基本的に僕たちの体の組織、筋膜だとかが癒着してくっつくことはあるのですが、それを物理的に剥がすのはほぼ無理なんですよね。だけど、みんなそれを頑張ってやっちゃっているんですよね。
これは外科医さんに聞くとわかる話なのですが、彼らが手術をするときに筋膜などを物理的に剥がそうと思うと、どうやって剥がすか知っていますか?
は「馬を解剖したとき、色々剥がしたけどメスで剥がさないと全然無理だった」
そうそう、だからスクレーパーみたいなものでガシガシいかないとだめですよね。そんなことを自分の体にしたらどうなるかわかりますよね。肩甲骨を剥がして健康になるどころじゃなくて、めちゃめちゃ怪我しちゃうわけですよ。
そのことを踏まえて、肩甲骨はがしはどうやって行ったら効果的なのか、お伝えしていきたいなと思っています。この方法をやると、肩甲骨が本当に取れます。
は「取れたらダメでしょ」
本当に分離しますから、体から取れる。
は「意味がわからない」
意味がわからないとか言ってるけど、これは本当なんですよ。
剥がすのは「脳の中の肩甲骨」— マカクザルの実験が教えてくれること
何も物理的に取れるわけではないんです。何が取れるかっていうと、皆さんの脳の中で、肩甲骨が自分の体から剥がれていきます。
これが脳で考えるっていうことなんですけれども、はるなさんは猿好きですか?
は「猿好き?(笑)」
突拍子も無い質問が多すぎるっていう。(笑)
は「猿好きだよ」
猿好きだよね。マカクザルっていう実験用の猿がいるんですよ。残酷な話なんですけれども、猿の人差し指と中指を縛って放置し、そのまましばらく生活させる実験があります。
すると……指の動きが悪くなるのはそうなんですけれども、この指に対応している脳の部分をチェックするとですね、今まで人差し指と中指と分離して脳の中にあったものが、くっついちゃうんですよ。
つまり、今までは二つの指として認識されていたものが、一本の指として脳に認識されるようになるんですね。これが問題となります。
肩甲骨でも同じです。普段から動かさない人は、肩甲骨と胴体が脳の中で一緒になっている状態です。だからこれを剥がしてあげればいいわけです。
早速エクササイズに入っていきましょう。
エクササイズ — 肩甲骨の筋肉をひとつずつ脳にマッピングする
まずは今の腕の動きをチェック
腕の動きをチェックします。前から上げてみて、横からも上げてみる。後は肩を回してみたりする。どうですか?

は「両方硬い」
両方硬い。まず最初に皆さんにお伝えしたいのは、肩甲骨についている筋肉です。
この肩甲骨を動かす筋肉ひとつひとつを、僕の言葉で言うと脳にマッピングしていってあげるわけです。この筋肉の動きはこういう感覚ですよ、この筋肉の動きはこういう感覚ですよ、と。それが脳の中で「肩甲骨を動かすには、こういう風に筋肉を使っていけばいいんですよ」という形で認識されていきます。
それをやっていくことによって、どれぐらいはるなさんの肩甲骨の動きが良くなるのか、これをやっていきたいと思います。
物理的にはどう変わるのか(Wolffの法則・Davisの法則)
そして、皆さんが疑問に思うであろうことは、これを行うことで物理的にはどんな変化があるのか?ということではありませんか?
結論から言うと、最終的には物理的にも肩甲骨の癒着は剥がれます。
「Wolffの法則」「Davisの法則」と言いますけれども、僕たちの体は力のかかる方向性に沿って段々と形を変えていくっていう性質があります。だからいきなり剥がれたりというのは、どんな施術でもありえないのですが、それが暫く一週間、二週間、三週間とかこまめに続けて頂くと、肩甲骨の状態が変わってきます。ですので、今日やったことで良い効果があったら、ぜひ続けてください。
たった一回「良くなった」で終わりじゃなくて、それを体に定着させるのはあなたの努力です。
⚠️ ここから紹介するのは、筋肉を強く緊張させるエクササイズです。痛みやしびれが出る範囲では絶対に行わないでください。筋肉がつりやすい方、肩や首を治療中の方は、力を弱めてできる範囲で。息を止める種目もありますので、血圧が高い方・妊娠中の方は特に慎重に行ってください。
① 菱形筋 — 肩甲骨を背骨側に引き寄せる
まず最初に菱形筋のトレーニング、菱形筋を刺激していきたいと思います。

菱形筋は肩甲骨の内側から背骨に向かって伸びている筋肉です。
この筋肉を刺激するときにやりたいことは、肩甲骨を後ろに引いてくること、そして肩甲骨が下方回旋といって外側に回転するような感じ、それと上に上がる動作。この三つの動作を組み合わせていくことが必要です。
これは考えてもできませんから、皆さんには手を後ろで合わせてもらって、肘を伸ばします。グッと。この状態で肩を上に上げていきます。肩をすぼめるようにします。
すると、両方の肩甲骨の間にグッと力が入るのを感じませんか?

は「うん」
ありますよね。これが菱形筋という筋肉になります。これで10秒間キープ、そしてリラックス。これは人によってはつる方もいるかもしれないので、無理しないように自分のできる範囲で行なってください。
② 大円筋 — 肩を後ろに引いて内旋・内転
これだけでも少し肩が開いたような感じがあると思うんですけれども、次に大円筋・小円筋っていう筋肉をやっていきたいと思います。これも両方やっていきます。まずは大円筋から。こんな感じで後ろで手を合わせてもらって、その状態で腕を後ろに引いていきます。ですから、背中から手を持ち上げるんですね。
大円筋の動きは、後ろに引いて肩の内旋、内転。これが大円筋の動きですから、それを組み合わせてあげるという感じになります。

は「きつい」
10秒間いきます。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、でリラックス。
③ 小円筋 — 肩の外旋+内転
次に小円筋ですね。小円筋の動きは肩の外旋と内転ですから、プラス肩甲骨の上方回旋が入るんですけども、これをやるには横に肘を90°に曲げて、外にねじりながら自分の体にギュッと肘をつけてくる。この時に肩甲骨は後ろに引かない。自分の脇にボールか何かを挟むような感じ、だから肋骨と肘でぐーっと押し合う。そうするとこの辺、力を感じます?

は「力入ってます」
ぐーっとその力を強めながら10秒いきたいと思います。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、でリラックス。
④ 小胸筋 — 烏口突起から肋骨へ
まだまだ行きますよ。次は小胸筋という胸の筋肉ですね。小胸筋は肩甲骨の前側にある烏口突起から、肋骨の2番〜5番の前についている筋肉です。これを刺激していくためには、まず最初、片方の手首を持ちながら腕を内捻りして、斜め下に向かってぐーっと前に押し出していきます。
10、9、8、7、この時肘を絞りながら、5、4、3、2、1、でリラックス。どうですか、胸の筋肉に力が入りましたか?

は「はい」
⑤ 前鋸筋(下側)— 息を吸いながら
次に前鋸筋をいきたいと思います。前鋸筋は二つのパートがあります。上側と下側。これがどういう筋肉かと言うと、肩甲骨の裏側から肋骨の横に向かってついている筋肉です。まず最初、自分の目の前で手を組んで背中を前に丸めてきます。この状態で肩甲骨を下に下げる、肩を下に下げる。そうするとなかなか下には下がらないんですけど、そこで力を入れながら。もう一つ行きます、息を思い切り吸ってください。そうすると、このあたりに力が入る感覚が掴めると思います。吸うときにずーっと吸い続けるときついので、吸って少し息を止めておくような感じでもいいと思います。
この筋肉を緊張させておく。息を止めるので5秒でいきます。5、4、3、2、1、でリラックス。どうですか?

は「今すごいこのへん」
このへんきますよね。
⑥ 前鋸筋(上側)
今は下側だったんですけど、今度は上側にいきます。もう一回前に手を出してもらって、今度はこの状態で肩を上に上げます。さらに少し前に出してあげて、息を思いっきり吸う。これで5秒間、5、4、3、2、1、でリラックスします。

⚠️ 前鋸筋の2種目は息を止めます。止めすぎず、苦しくなる前にリラックスしてください。めまいや立ちくらみを感じたらすぐ中止を。
もう一度チェック — 肩甲骨はどう変わったか
肩甲骨についてる筋肉は他にもあるんですけれども、だいたい大きい筋肉は刺激してきたところで、もう一回腕をチェックしてもらいます。

は「超軽い、マジで」
超軽い、良かった良かった。毎回ヤラセなしで、何をやるか伝えずにやってますので。今回は本当に嬉しいです。ちょっと回してみて。
は「やってる最中、ここら辺が超流れまくってたし、やった後にぶわーって流れてる感じがしました」
多分、動いてなかったところが動き始めると、その部分の代謝が良くなったからだと思います。
脳の中で肩甲骨を使う筋肉がひとつひとつマッピングされていって、肩甲骨の動きはより自由になっていきます。この自由になった肩甲骨で普段から腕を使っていくこと、様々な動作を行なっていくことによって、どんどん脳の中で肩甲骨が剥がれてきますので、これは本当に続けてください。
全部じゃなくても一つか二つ、気持ちが良いなと思うものだけでも覚えてやって頂く、これだけでもOKです。
何回も繰り返しますけれども、続けていただくことが一番重要ですので、ぜひやってみてください。
まとめ
- 肩甲骨は物理的には「はがれない」。筋膜の癒着を力ずくで剥がそうとすると、かえって怪我をする
- 本当に剥がすべきなのは、脳の中でくっついてしまった「肩甲骨と胴体」のイメージ
- マカクザルの実験の通り、動かさない部位は脳の地図の上で隣とくっついてしまう
- 菱形筋 → 大円筋 → 小円筋 → 小胸筋 → 前鋸筋(下側・上側)の順に、ひとつずつ力を入れて感覚を確かめる
- 各10秒キープ(前鋸筋は息を止めて5秒)。痛みやつりが出ない範囲で
- Wolffの法則・Davisの法則の通り、続けることで物理的な状態も変わる。一回で終わらせない
